映画「卒業」について

3月、京都に住むわが子の卒業式に行きました。最初に、「学歌斉唱」と読み上げられたとき、学生の間ではどよめきが起こったそうです。「学歌って何?」多くの学生がそのように思ったようなのです。娘に、「じゃあ、琵琶湖周航の歌は知っている?」「紅萌ゆる丘の花〜♪なら分かる?」と聞きましたが、「知らない」と。どうやら、最近の学生は、歌でつながったりはしないらしい。何だかさびしいなぁ・・・。

それから、山極総長が式辞を読まれました。潮見先生は「素晴らしい話」と称えられたそうなのですが、いつもながら、確かに、良いお話でした。ただ、それも、私たち世代にとってということになるのかも知れません。そうして、山極総長は、山極総長なりの誠意をもったお話をされたのだと思います。「大学は面白くなければならない」という持論のとおりで、大変うれしく感じたものです。

色々なお話をされ、それぞれ、懐かしい思いで聞いたのですが、その中で、映画「卒業」のお話があります。後で、娘に「式辞のお話は分かった?」と聞きましたら、「いや〜驚いた。卒業式に、不貞の話が出るとは!!」と言うのです。

そうか、確かに、不貞の話だったんだなぁと改めて思いました。私自身は、この映画を中学生の時に見たので、「不貞」という辺りはすっ飛ばして見たのですね。ただ、ベンジャミンが、式場で「エレーン」と叫ぶシーン、その後に、花嫁を奪って逃げていくシーンがやけに印象に残っています。そのような行動をした二人に向けられた社会の目は厳しく冷たいものだった、ということが、簡単に言うと、山極先生のお話だったわけですが、それを聞いて、娘は、「当たり前だよ。そんな不道徳なことをして、受け入れられるわけがないじゃない」という反応を示しました。

なるほどこれも然り。常識人の当然の反応ですね。しかし、これを聞いて、山極先生の言いたかった話とは、ちとずれるのではないかなぁと思いました。

山極先生は、恐らく、常識を打ち破るようなことをしようとしたとき、おそらく、みなさんの前に大きな壁が立ちはだかる、その壁にどう立ち向かっていくのか、考えてほしい、というようなテーマだったのではないかと思ったからです。

ま、それにしても、この卒業の後の話は、どうなるのでしょうね。
ベンがどれだけ、エレーンに惚れていたのか、今の私にはよく分かりません。また、逆にエレーンは、本当に、ベンで良かったのか、等々。

ただ、この映画が、忘れがたい映像を残してくれたことだけは確かです。
そして、山極総長が、「大学は面白くなければならない」という心意気を示してくださったことも確かだろうと思います。願わくば、そのメッセージが学生たちの心に届いてほしいものです。